このたび第31回日本呼吸ケア・リハビリテーション学会学術集会を2021年11月12日(金)から13日(土)の2日間、高松市のサンポートホール高松・かがわ国際会議場・JRホテルクレメント高松において開催させていただくことになりました。中国四国地区での開催は、2008年に上田暢男先生(愛媛県立中央病院元院長)が松山市で開催して以来13年ぶりになります。
学術集会のテーマは、「地域とチームで支える呼吸ケア~新しい社会・生活様式への融合~」としました。私は、長年の悲願であった中国と四国を結ぶ瀬戸大橋が完成した1988年に岡山大学から香川の当院に赴任しました。当時、呼吸器医師は私1人の小所帯で、大学では原因不明の全身病であるサルコイドーシスの病因論を研究してきました。そのため自然と患者を全身的、臓器横断的に診る姿勢が染みついておりました。この香川県では背景が多彩な呼吸器医師が驚くほど自由闊達に勉強できる雰囲気があり、皆で切磋琢磨して診療レベルを上げようとする熱気もありました。これらの仲間の助けもあって地域に居ながらアカデミズムにいつも接することができ、リサーチマインドを大切に持ち続け決して忘れる事はありませんでした。会長としてこれからも臨床と研究を大切にしながら、地域医療をしっかりと支えたいと思っています。
呼吸器疾患は急性から慢性疾患まで多岐にわたり、医師が指示するだけで臨床現場において実践できなければ、患者はこれらの苦痛から解放されません。吸入支援や呼吸器リハ等を介した職種横断的なチーム医療が重要になります。また団塊の世代全員が後期高齢に突入する2025年が目前に迫っており、病院から在宅医療までシームレスな地域ケアシステムや一歩進んだ病診連携の構築は不可欠です。学術集会ではこれらをテーマにしたシンポジウムを企画しています。それぞれの地域の特性に根ざした優れた呼吸ケアが全国に普及し裾野が広がることを期待しています。
当院のRSTは、2001年4月に全国に先駆けて先進的な取り組みとして起ち上げました。従前の「HOTの会」や「喘息教室」を発展的に解消し、包括的な呼吸器診療に対応できる職種横断的な新しいチーム医療をめざしました。このRSTの最もユニークな点は、チームリーダーはあくまでメディカルスタッフであり、医師はアドバイザーであり後方支援、旗振り役に徹したことです。この考えに共鳴した仲間がたくさん集まりました。メンバーは学会発表や認定士を取得することにより、それぞれの専門職種として誇りをもって成長しました。お陰でRST活動は2019年度学会賞の栄誉にあずかりました。呼吸ケアの奥深さと醍醐味を味わっただけで十二分に報われたと思っておりましたので望外の幸せです。
さて2020年の医療現場は新型コロナ対応に明け暮れた1年でした。また3密を避ける目的で多くの学術集会の現地開催が中止せざるを得なくなりました。現在、多くのリハビリ専門病院でコロナ感染のクラスターが発生し、呼吸ケアに新しい難題をつきつけています。呼吸ケアには人間の手の温かみを感じる言葉だけでは表現できない奥深さがあります。新型コロナに負けず、新しい社会や生活様式と融合した呼吸ケアの新しい方策を会員と一緒に模索したいと思います。
四国を一度も訪れたことがない会員も多数いると思います。全国一面積の小さな香川県の県都高松市は瀬戸内海に面した港町です。空から眺める多くのため池と讃岐富士、瀬戸大橋から眼前に広がる多島美と穏やかな瀬戸内海は一見の価値ありです。さぬきうどんを食べながら四国88番札所や金比羅参りはいかがですか。多くの会員の皆様の参加をお待ちしております。